2015-06-18

今夜は最後のBASSTECH

今からおよそ3年前。麻布十番にあったクラブ”Warehouse”で、block.fmの創始者M-floのTakuさんと初めて共演した時に、Takuさんから直々に「実はダンスミュージックを軸にしたインターネットラジオステーションを始めるんだけど、もしも良かったら番組をやりませんか?」 と声をかけてもらった。当時既にDJ AKi STREAMを開始していた自分としては、もちろん興味はあったし、ストリーミングで音楽をみんなに聞いてもらって知ってもらう重要性は強く感じていたから、1つ返事で承諾したし、むしろTakuさんがどんな考え持って展開し、自分のラジオ局に対してどんなビジョンを持っているのか? 凄く期待した。そして、AKiさんの好きなようにやってくれて構わないと寛容な気持ちを持って迎えてくれた。

BASSTECHでは、可能な限り鮮度が高い、まだリリースされていないプロモ楽曲を中心に紹介し、それらをMIXしながらトークもしっかりするのが主旨で、結構な量のお酒(テキーラ)を飲みながら番組配信していた時期もあったし、規定の時間を超えて、延長コールで1時間以上番組配信を延長してしまった過去もあって、今考えると、しっかりと時間のプログラムが組まれているラジオ局で、かなり無茶苦茶だったなと反省している。すいませんでした。でも、それぐらい楽しくいつも配信させてもらっていた訳だけど、紆余曲折しながら、今ではほとんどお酒も摂取しないで、しっかり台本も書いて真面目に配信する品行方正な番組スタイルに辿り着いた。(そう思っているのは俺だけ?)

配信しているスタジオは、自分が慣れ親しんだ渋谷富ヶ谷にあって、昔仲間達と住んで居た一軒家のはす向かいで、数ヶ月前迄住んで居た自分の家から歩いて3分と、正に地元エリア。Takuさんの趣味が反映されているインテリアや、雑貨、レコード、機材、書籍等、センスが良くて、居心地が良い解放されているスタジオで、スタッフもみんなナイスな仕事が出来る大好きな人達だ。番組を開始してからから3年経って、block.fmのおかげで色んな経験や沢山の人達との出会いを与えてもらって心から感謝している。そして、今夜は最後のBASSTECHになる。

block.fmで番組を持たせてもらってから強く感じているのは、今迄自分ではリーチ出来なかった人達にドラムンベースという音楽を知ってもらう機会が格段に増えた。ある時は、九州自動車道のサービスエリアで、トイレから出て来た俺に、「AKiさんですよね?block.fm聞いてます!」って声をかけてもらったり、元block.fm局長TJOさんと一緒に訪れて、往路の電車の中で、音楽やクラブシーンの現状等、凄く沢山の良い話が出来て、それ以来色んな新しい音楽の情報をTJOさんが与えてくれるきっかけになった、富山県魚津のクルー達も大のblock.fmリスナーだし、先日の浜松クルーの1人がblock.fmでドラムンベースを勉強させてもらってますと言ってくれた。そして、毎週水曜日に配信されている番組、LOCALIZEでドラムンベースを知って、そこから06SやBASSTECHに集まってくれるようになった人達も一杯居る。今では、DJ AKi STREAM、BASSTECH、JUPITER RADIO、3番組全てを聞いてくれて、タイムラインを賑わしてくれる愛すべき人々。block.fmから拡大し広がっていった人達の輪は自分にとって掛け替えの無い大切な物であって、彼等との出会いはとても大きい。きっと、これはドラムンベースシーンに限った事では無くて、多ジャンルでも同じ現象が起こっているだろうし、block.fmを聞いてダンスミュージックを知って、クラブや各種パーティーに通ってくれるようになった人達は山のように居る。間違いなくblock.fmが日本のダンスミュージックシーンに与えた影響力は計りし得ない。


冒頭に最後と書いたけど、実際は今迄の第3木曜日24時から、第4木曜日の22時半から24時迄に番組改編に伴って移動する。BASSTECH by DJ AKiが遂にゴールデンタイムに突入なんだよ。今迄寝落ちしちゃいましたとか、翌日の仕事や学校が早くて聞けませんって声があったけど、これで聞きやすい時間帯になるし、しかも1時間から90分番組に拡大。自分にとって今回の提案はとても光栄な事で、素直に嬉しく喜ばしい事だ。これから気持ちも新たに、より品行方正なDJ AKiをお見せすべく、リニューアルする新番組BASSTECH+(ベーステックプラス)を楽しみながら、しっかり楽しんでやって行こうと思います。そして、今迄以上にみんなでタイムラインをガンガン滑らせて盛り上げてくれたら、DJ AKiはとっても幸せです!

2015-06-10

BPM1の攻防

 BPMとは、Beats Per Minute(ビーツ・パー・ミニッツ)の略称で、音楽や演奏のテンポを示す単位。DJにとってどのBPMを推移して、フロアーに音楽を継続的に落とし込むか? 簡単に言うと音楽やリズムのスピード感をどのスピードで流すか?まず基本的にDJが考えるべき大切で重要な要素だ。同じ曲でもBPMが10違えば全然違う曲に聞こえるし、音楽の速度によって音のキーも、もちろん変わる。最近のドラムンベースは、174BPMでリリースされるケースが一般的で、ある意味世界基準のBPM数値。DUB STEPなら140、EDMなら128等、ジャンルによってBPMは異なる。実際最近のDJ AKiのプレイ中のBPM はめっきり落ちて来て、06S開始当初は180を超えていた時もあったけど、現在は主に175が、素材を損なわず自分のグルーブにフィットしていて、感覚的にしっくり来る。

15周年へ向けた第1歩を踏み出した06S。06月06日(ゼロロクゼロロク)と、今迄年に1度しか来ない6月で6日だった日が過去14年間にあった記憶がないけど、とにかく06Sにとって縁起が良い日。ゲストDJにイギリスブライトンを拠点に活動する、SHOGUN AUDIO主宰、DJ FRICTIONが1年ぶりに再来日してくれた。説明不要のDJスキルは正に世界トップクラスで、昨年からpioneerのオフィシャルパフォーマーに就任しただけあって、4台のCDJを駆使して繰り広げるMIXは職人技。プレイの安定感が抜群で、CUEの設定を細かく切りまくって、狙い澄ましてハメ殺すダブルドロップの洪水は、彼独特な疾走感や音圧、躍動感を産む。計算され尽くした 90分の流れやフロー作りは流石の一言に尽きる。この日がオーストラリア・ツアーを終えて立ち寄った日本だけに10連投目。10日連続、移動しながらDJをするのは、かなり体力的にハードで簡単にはやりきれないけど、プロのDJにとって、それが仕事であり、好きで無いと到底乗り切れる物ではない。FRICTIONは普段から接していると、この人本当にDJするのが好きなんだなぁって思わされる生粋のドラムンベースDJだ。

 ゲストアーティストを毎月招聘する理由の1つとして、もちろんそのDJをシンプルに見たいのが大きな理由だけど、もう1つ個人的にある目的は、世界のトップDJやプロデューサーを招聘して、自分が1番慣れ親しんだホームであるWOMBのDJブースで、彼等がどんなプレイやパフォーマンスをするのか未だに凄く興味がある。全く同じ環境に本物のアーティストが身を置いた時に産まれる自分との違いを間近で感じる事で、自分に足りないところや、改善すべきところ、また自分のチャームポイントをしっかり比較出来る。実際DJを始めた時からこの20年間ドラムンベースのみならず、色んなジャンルのDJを間近で見て来た。ブースにかじり付いて、1つ1つの動きを把握して、技を学び、それを糧に成長してきた。DJは音楽であるけれど、目から入ってくる情報も実は沢山あって、目で学ぶ事も凄く大切だ。簡単に言うと同じ土俵でどんな相撲を取ってくれるのかがワクワクするんだよ。DJは格闘技じゃないから個人個人でDJに対する評価は千差万別だし、勝負事のように明確な結果がある訳では無いけど、自分としては毎回来日してくれるアーティストに負けない気持ちでブースに立ってる。

そんな世界の3本指に入ると思う、FRICTIONとの対戦。彼は1流中の1流ですからね、簡単には隙を見つけられないけど、勝てない相手では無い。彼のプレイで今回気になったのは、BPMが177前後で推移していた事と、所謂王道系の楽曲でまとめていたのがポイント。いつもよりも少し早い気がしたし、最近の自分ではかなり早く感じるBPM。でも、フロアーのテンションは最大迄膨れ上がっていた。いつもゲストとDJを交代する時に考えるのが、自分はどのBPM数値から始めるか?で、前のDJが180近かったりすると、176で開始するとグルーブが落ちたように感じるのは当然。でも、だからと言って同じBPMで始める事も出来ないし悩みどころだけど、今回はFRICTIONから1つ落として開始。この1つの差がフロアーに大きな違いを産む。実際は1つ落としていても曲のテンションによって、スピード感が違って聞こえるのも不思議なグルーブのマジックで、1つ落としているにも関わらず、FRICTIONよりも自分のグルーブが突っ込んでいる印象を開始数曲で感じて、そこから徐々に175まで落とし込んだ。いつもの自分の時間帯は3:30から最後迄と遅くて、ゲストDJが上げ倒してくれると、フロアーの人々のエネルギー残量が落ちるのも当然で、ピークタイムから同じBPMをひっぱっても、うまく行かない事が多い。結局フロアーを見て感じ取ってその場の雰囲気や時間の流れに合った音楽やBPMをコントロールしないといけない。FRICTIONから引き継いだBPMを最終的に2つ落としてパーティーが終わったけど、今回はその微妙な差が1晩の流れを奇麗に作ったと、やけに感じた06Sだった。そして、何と言っても RamからリリースされたJUNE MILLERと、Hospitalからの LYNXのアルバム!! この2つのアルバムから選曲した楽曲達のMIX映えが素晴らしいと思った。彼等は正に新世代のプロデューサーで、変則的で期待を裏切るような構成力がたまらないし、2015年を象徴する旬の音で、自分のDJセット内のエッセンスとして効果的に役割を果たしてくれた。アルバム通して楽しめる作品だからチェック! DJ的には最近はまってるループ機能もいつも以上に多用してライブ感が強めに表現出来たし、え!?もう4:45??って思う程一瞬で自分のセットが終わってしまった感覚だったけど、Frictionとの対戦で、今迄気づかないような新しい世界観を垣間みれて、これから更に進化するドラムンベースに早く出会いたいと強く思った。そして、みんなのおかげで15周年の第1歩を無事に踏み出せて最高の夜だった。

2015-06-01

静岡36時間の旅

初めての街に訪れDJをするのは、この上ない喜びであり、とても幸せを感じる大事な時間と経験。それと同時にいつも以上によりインパクトが強いパフォーマンスをするのも重要で、DJを始めた時から全くブレていない、ドラムンベースの魅力を伝え、少しでも日本のシーンが拡大して欲しい想いを昇華させ為の大切な機会だ。先週末は、そんな想いと共に初めて静岡県浜松市のBASS MUSICパーティー"EFEKT"に招待してもらった。長い間 DJをしていると、仕事の依頼メールの文面を見れば、どれくらい真剣な想いでパーティー開催に努めているか推測が出来る。EFEKTクルーの代表でオーガナイザー兼DJの加藤君は、某自動車メーカーの車のデザイナーで、メールの詳細や文面がとても律儀で仕事が出来る人だな、と印象が強かった。先日の大阪での舞音楽祭にも顔を出してくれたし、しっかりと挨拶もしてくれて、今回訪れる前から浜松でのDJは楽しい事になりそうだと感じていた。

会場のPlanet Cafeは、20年間浜松の音箱として存在し、浜松のダンスミュージック好きに支持されてきたクラブで、箱の規模は大きくは無いけれど、しっかりと音が鳴っていて、十二分に音楽が楽しめるサウンドシステムが装備されている。20年継続出来ているクラブは、もしかしたら日本最古かも知れない。長い歴史に裏付けられている通り、スタッフの皆さんの仕事振りも対応もとても心地良かったし、お酒も美味しかった。もちろんそんな素晴らしいクラブのスタッフとパーティーを形作っているEFEKTクルーも、みんな真面目で音楽が純粋に好きな人達やDJの集まりだった。

DJをした感想だけど、浜松に訪れる前日に、既存のDJセットに新曲をまんべんなく散りばめて、上げ進行でありながら、ドラムンベース及び、BASS MUSICの魅力を余す事なく伝えるイメージをしていたんだけど、そのイメージが思いの外奇麗にはまって、フロアーの爆発力は、小さな地方都市とは思えないテンションで、東京や関西からの遠征組も含め、お客さんのノリが素晴らしく、スタッフのみんなも終止笑顔が溢れ、とても良いパーティーバイブだった。どんな場所でDJをする時でも、場所に合ったイメージに沿って、フロアーの反応を見つつ、DJ中に軌道修正するケースが多々あるけど、浜松の人々は、想像以上にドラムンベースの理解度が高く、常日頃から地元のDJ達が、自分たちのシーンに正しい音を伝えていると実感出来た。いつも思うけど、街の規模やパーティーの大きさに関わらず、最終的にはどんな人がどんな目的を持って、パーティーを開催しているかがとても大事で、色んな街でDJをして来た自分としては、浜松はかなり有り!! なパーティーだった。先日の名古屋も良かったし、東海地方は東京や関西とまた違った人と雰囲気、面白さがあると思う。そして、浜松名物と言えば、ウナギ!ウナギ大好物なんだけど、パーティー当日に連れて行ってもらったのが、浜松駅前の八百徳本店。うな重と迷いつつも食べた櫃うな茶漬けは、刻みネギとワサビをたっぷりと乗せて出汁を注ぐスタイルで、名古屋の櫃まぶしの印象とは違って、若干味が薄味で食べやすく、代々引き継がれている秘伝のタレと、厳選された活きの良いウナギの旨味が十二分に堪能出来る納得の老舗の味だった。肝焼きも美味しかったし、ウナギのグルーブも相まって納得のDJが出来た事は間違い無い。そして、今回静岡掛川から参戦したSIMOが泥酔して、パーティー終了後自分のPCや機材が入った鞄を残したまま行方不明になり、クラブ近くのビルとビルの間から発見されたのも、パーティーがいかに素晴らしかったかを象徴している(笑)

パーティー翌日は、レイトチェックアウトから静岡名物さわやかのハンバーグを食べて浜松を発ったんだけど、東名高速道路を走っていると、神奈川県に突入する直前に玉突き事故による渋滞18kmの表示が。。。とにかく渋滞にはまるのが大嫌いで、ひとまず、足柄SAで停車してどうしようか考える事にしたんだけど、以前足柄SAに立ち寄ってfacebookに写真を投稿した際に、常日頃からいつも温かく応援してくれているミカネーサンが、近くに住んでいるから呼んで下さいよってコメントをくれた事を思い出して、twitter越しに近くの良い温泉が 無いか教えて欲しいとメールをすると、即返信が来て迎えに来てくれると。それは悪いから温泉の情報をカーナビに入れれば自分で行けるから大丈夫だよと言っても、地元民が行き来出来る場所があるからと。言われるがままに車をサービスエリアに停めて待っていると、10分もしないうちに迎えに来てくれた。足柄SAに、地元民専用の裏口があるなんて知る由も無かった。

温泉は趣味だから日本中の温泉地に訪れたけど、富士山近辺の温泉は、あんまり良い印象が無かったんだけど、連れて行ってくれた、あしがら温泉は、小山町という小さな街合いのおもいっきり田園風景な場所に位置していて、町立な公共温泉で、所謂スーパー温泉的な施設では無く、こじんまりとしつつも地元の人々に愛されている温泉場で、掃除もしっかり行き届いている建物で、柔らかな肌触りのお湯は身体が芯から温まり、浜松での疲れを奇麗さっぱり洗い流してくれた極上の泉質だった。天気が良かったら露天風呂から富士山を目の前に望めるロケーションも最高だし、本当に良い温泉は、豪華絢爛な施設に限らず、今回訪れたような場所にあると改めて実感出来て、忘我な時間を過ごせた。およそ36時間の旅だったけど、ナイスな人々と楽しいパーティーを過ごせて、食事も美味しく、最高の温泉に浸かれた。地元の人達に導かれて贅沢な時間と経験を頂けるから、DJという仕事はやっぱり止められないと思った静岡へのショートトリップ。身も心も満たされた楽しい時間でした。

泉質 : アルカリ性単純温泉(アルカリ性8.8ph、低張性、低温泉) / 効能 : 神経痛、運動麻痺、慢性消化器病、病気回復、健康促進等