2015-07-24

グルーブの謎

グルーブとは常に謎だ。そもそもグルーブの由来は諸説あるけど、レコード盤の溝による音の緩急や強弱から産まれ、踊れる音楽の雰囲気や空気感をグルーブと呼んだらしい。もう20年もこのシンプルかつ、奥深い世界に足を突っ込んで時間が経つけど、このグルーブという存在が、ダンスミュージックには不可欠で、人に高揚感を与え、心地良く音楽にはまって踊る為には、絶対的にグルーブが無くてはならない。そして、時にその表現方法の難しさは厄介でもあり、とてつも無い謎に満ちている。自分の過去の経験上考えられるのは、グルーブとは自分の肉体や精神の奥底から沸々と湧き出てくるようなものであって、音楽でありながら音楽を奏でる訳でも無く、作曲をするでも無く、既に存在する音楽2曲を混ぜ合わせMIXする結果、そこに生まれる音楽のうねりや融合感を表現する為にグルーブは存在する、口では説明しずらい感覚的な物だ。それはコンピューターがどれだけ進化して、正確なタイミングで2曲を混ぜ合わせたとしても、逆に非人間的なグルーブになってしまって、人間が醸し出すグルーブは、人間にしか表現出来無いし、より良いグルーブを表現するには、その日のコンディションが重要で、食べたものとか、精神状況に激しく左右される。

DJ AKiのDJ論として、再生している曲に、次の曲を混ぜるのでは無くて、自分のグルーブに再生されている2曲を合わせるべきと考える。そうする事によって、所謂それぞれのDJ達のグルーブが産まれると、キャリアが10年過ぎた頃に気づいたタイミングがあった。DJを始めたばかりの頃は、2曲のbpmを合わせる事しか考えられ無いけど、お前らに合わせるんじゃ無い!俺に合わせる!と、長い事DJをしているとそんな悟りが開いたりする。(この考えは俺だけかも知れない?)そんな自分のグルーブをしっかり形作る事が出来る程、個人的には好きなDJの大きな評価基準になっているから、自分としては、今までそのより良いグルーブを産む為に人生の全てを注ぎ込み、挑んできたと思っている。


ビートは基本的にスネア、キック、ハイハット、タム等によって構築されるけど、2曲をMIXする時に、どこを狙って落とし込むか?どのポイントを重ね合わせていくのか?が、もの凄く重要で、全く正確に狂う事なく完璧にビートをシンクロ(同期)させても、踊れなくてつまらないグルーブになりがちで、常日頃からTRAKTARやCDJのシンク機能を使うDJに対して疑問が残るのと同じ。では、どうすれば自分本来のグルーブを表現出来るのか?差し込んでいる曲のビートが既に流れている音楽よりも突っ込ませるのか、それともビートの裏気味に乗せていくのか?で全く違うグルーブを産む。個人的な見解だけど、前者は白人、後者は黒人がそれぞれの人種が持つグルーブの特性表現を持っていると思う。じゃあ自分はどうなのかと言うと、意識的に常日頃から2曲目を前のめりに突っ込ませるグルーブ感を強調させていて、それがみんながいつも感じてくれているDJ AKiのグルーブ感だったりする。案外繊細な話でDJでは無い人に文章で説明するのは難しんだけど、伝わってるかな? もっとちゃんと知りたい人は直接話してあげる!(笑)

そんなグルーブだけど、先日のJupiter 6時間セットはいつもの自分とは違って、前のめりでは無くて、何故か心身共に裏に入りたがっている自分が居て、裏気味に入りながら、より楽曲を引っ張っていくようなMIX感が6時間終始継続的に強調され反復していたと思う。冒頭に書いたように、自分でも何でなのかが分から無いんだけど、それがグルーブの謎。最近はアワビとかウナギを食べてからDJをする機会が多いけど、この日は厚切りのステーキを食べたからかな?とか、好きな夏になって暑くなって日焼けしまくってるからかな?とか、最近割と毎日楽しく過ごせてるからかな?とか、色々と思い当たる節はあるけど、意識的では無い部分で、自分のグルーブに違いが産まれるのは間違いない。そんな感覚を感じ取ってか、今日のAKiさんはいつもよりもよりハードでしたねと、結構色んな人に言われたんだけど、発信側と受け取り側のグルーブの感じ方も随分と違う物だなと思った。でも、普段の自分から湧き出てくるグルーブと違う良いグルーブ感があったのは事実で、物凄く6時間が楽しかったよ。どちらにしろJupiterは本当に濃厚なドラムンベース好きが早い時間から遊びに来てくれて、DJブースとフロアーが凄く近くて、波動のキャッチボールがし易く、アットホームな雰囲気が最高に好きだ。次回のJupiter @fai青山は9月12日で、しかも8月21日は初めての大阪CIRCUSでの開催になる。06Sとまた違ったライフワークになりつつあるJupiterは、刺激的で毎回沢山の大事な要素を学ばせてもらえる。朝まで1晩中DJをやらせてもらえるなんて、こんなに贅沢でDJ冥利につきるパーティーは無いし、混じりっけ無しで100%ピュアなDJ AKiのグルーブをお腹いっぱいに満喫出来るJupiterをみんなで育ててやって下さいな。そして、今後もDJ AKiのグルーブ感の探求の旅は続いて行くのであります。


2015-07-10

グアムレポート

梅雨が憂鬱な日本から3日程脱出して、初めてのグアム島に訪れた。グアムは太平洋にあるマリアナ諸島南東の島で、成田から飛行機で3時間と利便性が高く、手軽な海外旅行先で、家族連れや初めての海外旅行者に向いていて、日本でも一般的な観光地。今回の旅の目的は今年で開催3回目の5,000人規模の音楽フェスティバル”Electric Island Festival”と、WOMBのコラボレーションがあって、WOMBのステージも設けられる初の試みだった。基本的にEDMが軸のフェスだから、ドラムンベースの入り込む隙間が無く、自分はフェス前日のプールパーティーでのDJオファーだった。正直過去にグアムに訪れた人達の感想を聞いても良かった試しが無いから、過度の期待をしないで、ひとまず近いし南の島にでも行くかと、軽い気持ちで旅立った。でも、実際訪れてみるとそこは海外。海外に行くと背中から羽が生えたように解放されて活き活きとしちゃう性分だから、ブラジル以来約1年振りの海外で、到着から灼熱の太陽と、むせるような熱気に南国好きな自分としては、心が躍らない訳が無い。


ホテルに到着すると、既にプールパーティーが始まっていて、自分の部屋はプールの1フロアー上で、DJブースの真上。徹夜からのフライトで3時間しか飛ばないと、充分な睡眠が取れないから、え~もう着いちゃうの?って思いながら、眠い目をこすりながらホテルに到着して、夜のDJの為に一眠りしようと思ってもそこは爆音鳴り響く部屋で当然無理。ひとまずDJまでパーティーで遊ぶ事にして、程なく自分の出番になったけど、プールパーティー最後のDJで元々関係者のみのパーティーだったから、正直そこまで人が居なくて、ここはまずグアムの関係者にちゃんと音楽を伝えようとDJを開始すると、1曲目でいきなりDJ機材全ての電源が落ちた。。。特設のDJブースで屋外だと起こらない事故ではないから、復旧を待っていると、ホテル自体のブレーカーが飛んでしまって、回復不可能と判断。グアム迄来て1曲もかけれないのかぁと困惑していると、クルーの連中が今夜ホテルから歩いて5分のところにあるクラブでパーティーをやるから、このままこの機材を持って行くし、ここよりも人が居るし、何時に来てくれても構わないから、DJをやりに来てくれないか?と。これは予想に反したオファーで、お願いされれば何処にでもDJをしに行く精神の自分としては、1つ返事で承諾して、部屋に戻ると大雨のスコールが降り出した。おかげでユックリと一休み出来たし、これって音が止まってなかったら機材が大変な状況になってたなぁと思うと、グアムに来ても晴れ男伝説。今夜のパーティーでAKiにDJしてもらう為に音が止まる運命だったんだよと、グアムの人々は明るくナイスで前向きだ。
クラブに向かってホテルから歩いていくと、もう既にダンスミュージックが300m先から聞こえてくる。小さなクラブの入り口にはスピーカーが設置されていて、外に向かってガンガン音を鳴らしている。こんな風に爆音を外で鳴らしたら、日本だったら騒音苦情で直に警察が来ちゃうけど、そこはグアム。むしろ音に誘われて人が集まって来る。お店の作りは凄くシンプルなバーが1つあるラウンジ形式の内装で、客層はほとんどが現地のアメリカ人。人種も様々で、黒人、白人、アジア人、現地人? 等、多種多様。どうやらグアムで唯一の音箱らしく、久しぶりの海外でアウェーな環境。きっとドラムンベースを全く知らないであろう人々をどうやって踊らすか腕が鳴った。実際にプレイしてみると、まずは黒人達がDJ AKiのグルーブ感に引っ張られて、ソファーでまったりしていたのに、突如ガンガン踊りだした。音的には歌ものを中心にあまりオーガニック過ぎない選曲で組み立てた。アメリカでDJするのは本当に久しぶりだったけど、もちろん英語圏だから歌詞の並びに拘ったのも功を制したと思う。失恋の歌詞からハッピーな歌だと意味合いがおかしな事になるからね。その辺の意図も通じたのか、その場に居た人達のノリの良い事。終止最後迄大盛り上がりで、改めて音楽に国境は無いなと実感出来たし、音楽知識やボキャブラリーに捕われず、しっかりとしたDJのグルーブと良い音楽さえ鳴っていれば、何処であってもパーティーはきちんと成立するし、伝えるべきグルーブが受け取り側に理解してもらえれば、4つ打ちだろうとドラムンベースだろうと関係無い。


プールパーティーで音が止まった事で、想定してなかったギグが出来て凄く楽しかったから、ご機嫌でその夜を過ごし、空腹で朝早く起きてしまったのもあって、ホテルの朝食バイキングを食べに行ったら食あたりに。。。最近自炊メインで油を抑えた野菜中心のヘルシーな食生活をしてる自分としてはいかにもアメリカな食事と油が全く合わなくて、腹痛に見舞われ起き上がれなくなってしまった。その夜はメインイベントのフェスなのに、でも絶対的に行けないなぁと思っていると、薬を持って迎えが来てくれて、何とか会場に足を運べた。会場に着くと人種のるつぼで、フェスのお客さんは割と年齢層が若め。時空ボケもあって、一瞬自分が何処に居るのか?分からなくなったけど、熱気があって賑わっている。メインステージはEDM。WOMBステージはテクノ。WOMBのステージのサウンドシステムの鳴りと、大型LEDスクリーンの質感がアナログ感満載で、何故か懐かしくも暖かみがある演出。南国の開放的な気候と空気感に遊びに来ている人々は終始楽しそうで、良い雰囲気のフェスだった。

最終日体調も何とか復活して、部屋でゆっくりしていると、今夜のビーチパーティーでもDJをしてくれといきなりオファーが。ドラムンベースがグアムにも思いの外響いたようで、パーティーの閉めをどうか?と。もちろん断る理由は無い。大きなビーチサイドのレストラン脇に特設DJブースが設置されてある。背中にビーチを背負った景色のサンセットはロマンティックに奇麗で、中々のロケーションを見つけたなぁと感心。昨夜のフェスティバル関係者やDJ、もちろんお客さんも沢山集まっていた。ビーチパーティーならではのまったりとした雰囲気で、みんなお酒と食事を楽しんでいたけど、ブースの前にはそれなりのフロアーのサイズもあるし、割と音が鳴っている。まずは、ディープ目でトライバルな音でDJを開始して現地の黒人の人々を取り込んでみた。すると音に引き寄せられられるように人が集まって踊り始めた。彼等は本能的にグルーブ感がイイから、黒人がフロアーで踊ってくれると、フロアーのテンションがグッと上がる。そこからオーガニックな如何にも海にマッチしたポジティブな歌モノを連発して、最高潮なテンションで無事に終了。夜のビーチサイドの雰囲気は本当に心から楽しめた。その場所と雰囲気に合った音楽で響き渡る音楽の力は、海外だとより深くまで心に沁みる。

今回のグアムは予想に反して2回全く想定しなかった場所でDJをしたけど、自分は凄くツイてるし、良い意味で持ってるなと改めて思ったよ。2ギグともグアムでDJするならこの2カ所でしょ!と言っても良い程の最高の環境でDJをやらせてもらえたし、初めて訪れた土地なのに現地のホントに心が優しい沢山の人達とコミュニケーションを取れて仲良くなれた。もちろん日本から来てくれていた人達と海外ならではの時間軸の中で色々と建設的な話がゆっくりと出来たし、WOMBのクルー達とも記憶に残る思い出が出来た。音楽を通じて広がるボーダレスな友達の輪や、まだDJ駆け出しの頃にNYで外国人を相手にDJをしていた頃の懐かしい記憶も蘇えったりで、貴重な経験になった。そして、前日のフェスに出演した同級生だけど大先輩のKEN ISHIサンが、フロアーで踊っていてくれて、AKi君Good Jobだったよ~と言ってもらえたり、卓球さんにもロケーションにはまった良いセットだったよ、しかもISHII君がドラムンベースで踊るのを初めてみたよって笑って話してくれた。大先輩のテクノレジェンド達からの愛のあるメッセージはグアムの大きな記憶の1つになった。


グアムは東京からたった3時間のアジア圏なのに、英語が普通に通じるし、もちろんおもいっきりアメリカで、こんな近くにアメリカがあるんだなと初めて知った。70年前の戦争当時だったら、機関銃で殺し合っていたであろう土地で、楽しく至福感に包まれながらDJが出来て、何て良い時代に生きてるんだろうって痛感したよ。観光で見るべき場所も無いし、3夜連続でパーティーだったから、パーティーとホテルで3日間があっと言う間に過ぎてしまったけど、食事さえ改善されればまた絶対に訪れたい南の島だった。来年もこの企画絶対にやって欲しい!